あのトモ

- 本に出てくるあの娘ぼくがトモダチになろうっていったらどんな顔するんだろう -

「言葉にできる」は武器になる。- 言葉を紡ぐことは、立派にものづくりでした ...

「言葉にできる」は武器になる。

「言葉にできる」は武器になる。

話題書コーナーでずっと気になっていたコイツ。

自他ともに求めるインプット人間の私、アウトプットがとても苦手です。思いは、口にし出すとそれなりにあるくせに、それをうまく伝わるようにできない。 藁にもすがる思いで、ページをめくりましたが、まさにそんな自分への処方箋のような一冊でした。

なぜこの本が売れたのか

私のような悩みの方は多いんじゃないかと思いのはもちろん、この本が支持されるには以下の理由がありそうです。

とっつきやすい仕組み

三章仕立てです。

第一章では言葉を「内なる言葉」と「外へ向かう言葉」へ分類し、第二章で「内なる言葉」を、第三章では「外へ向かう言葉」を磨く方法が紹介されています。

特に第二章、「内なる言葉」を磨くノウハウの紹介では、読者が 「自分ごと」 として取り組めるよう、ワークショップ形式での読み進めが可能な仕組みになっています。検討するテーマが用意されていない読者向けにも、本の方でいくつかサンプルのテーマを用意してくれているので安心です。

取り組むにあたり「ゲーム感覚」で、軽めにやってみることを推奨してくれているのも、やってみる側としては気軽に取り組めてよかったです。

信頼できる内容

紹介されているノウハウが我流ではなく、誰もが納得する基礎知識をもとにしているところに信用を覚えました。

二章の「内なる言葉」を磨くステージでは、マーケティングの分析手法として確立されている「MECE法」を基に、アイデアづくりの良著として知られているいくつかの著作からの発想が盛り込まれています。

三章の「外へ向かう言葉」を磨くステージでは、中学校の教科書で誰もが通った基本的な日本語の文法を基に、著者の現場経験の発想が盛り込まれ、信頼度の高い内容となっています。

テストで点を取るためだけにやっていた、単調な勉強の実践の機会がこんなところにあったとは。中学生の時の自分を励ましてやりたくなりました。

紹介されているテクニックで書かれている

言葉選びの点で言うと、本著は三章で紹介されている「外へ向かう言葉」のテクニックをそのまま、自己言及的に駆使して書かれているのに気づきました。 そんなところにも信用が置ける一冊です。

以下、二章と三章から特に印象に残った点について、言葉にのこしてみます。

「内なる言葉」の章より、解像度と「内なる言葉」

第二章で「内なる言葉」を高めるノウハウの紹介の中で、言葉の「解像度」に言及があります。

まさにこの「解像度」と言う言葉そのまま、わたしがぼんやり思っていたことだったので、ストンと腑に落ちました。

ある分野に詳しい人と同じものを見ていて、そこから湧き出てくる言葉、アイデアの量・質の違いに驚かされた経験はないでしょうか? たとえば絵画に詳しい(あるいは自らも筆を取るような)友人と美術館に行った時。たとえば職場の先輩に仕事を見てもらっている時。

かれらは私よりも精密な「解像度」で物事が見えているに違いない、と感じていたのでした。

わたしは何かを理解する必要に迫られた時に、大まかに概要を把握したらそれで満足してしまうフシがあります。これを世に「大雑把」と呼ぶのかもしれませんが、そんな自分の性質に時々空虚さを思うことがありました。「解像度」が低かったのだと、今になって気付かされたのでした。

ジョージ・オーウェル著、「1984 」が流行りましたが、まさに私の脳内には、ビッグブラザーが巣食っていたようでした。自分の思考を陳腐化させているのは、自分の言葉との付き合いを雑にしていた所業に他ならないと、反省しました。

「解像度」を上げるための手法の一つとして、あるアイデアに対し以下、3つの問いをぶつけてみることが紹介されていました。

「なぜ?」 .... 考えを深める

「それで?」 ... 考えを進める

「本当に?」 ... 考えを戻す

一つのアイデアを、前後に引き伸ばして検討してみるイメージですね。

「外へ向かう言葉」の章より、「あなたに伝えたいことがある」と言う有能なチェックツール

ものが伝わる、という状態には以下、4段階あります。

無理解 -> 理解 -> 納得 -> 共感

「共感」を呼び、実際に行動を誘発するところを、コミュニケーションの最終段階とし、「共感」をおこすためには「人が動きたく」なる「ときめく」言葉が必要で、ひとをときめかせるにはまず、ベースとなる「熱い想い」が必要です。

伝えたい「熱い想い」が用意できたあとは、外向けにデコレーションすると、一層言葉は強く、伝わるようになります。外向けにデコレーションする時のチェックツールとして「あなたに伝えたいことがある」というのが紹介されていました。このフレーズを、伝えたい想いの枕詞として持ってきて違和感を覚えるかどうかで、使おうとしている言葉の本気度を測ることができるそうです。むむなるほど ...

「あなたに」 ... 伝えるべき相手は明確か

「伝えたいことが」 ... 心から湧き出てくる想い、本心であるか

「ある」 ... 断言しきれる内容か

ほかにも、自分だけの言葉を探す方法(つまりウィットの効いた言葉のみつけかたですね)や、古い言葉の意味の再解釈・提示のうまい方法(〇〇って、△△だ。と当てはめてみる)など ... など! すぐに導入していきたい工夫がたくさん紹介されていました。

総評 : 言葉って ... パンなのかしら

実はわたし、この感想をまとめる作業を、中で紹介されているワークショップに従ってやってみました。

こんなかんじ。

実際にやってみると、やり慣れている人が監督的にいてくれるといいのになあと思いました。

「分類してみる」工程で、アイデアどうしの類似性を見極める粒度が難しく思えたのと、客観視して自分の書き出した内容をみることが難しく思えたのでした。やり慣れてくれば脳内に監督が出来上がってくるのかもしれませんが、はじめはよくわかっているおとなのひとと取り組むのが良さそう ...

言葉とパン

不思議や不思議、読み終えてまず、言葉紡ぎとパン作りの類似性を思わずにはいられませんでした。

パンを焼いたことのある方ならわかるでしょうが、パン作りの工程を洗い出すと次のようになると思います。

  1. 素材を選別する
  2. 混ぜ合わせる
  3. こねたりひきのばしたり
  4. 寝かせる
  5. 分類する(パンの種類ごとにわけて整える)
  6. 飾る(黄身を塗ったり、詰め物をしたり、見栄えを整える)
  7. 焼く
  8. 食べてもらう

厳密に対にしてみることはできませんが、1 ~ 5 が「内なる言葉」を高める過程と、5 ~ 8が「外へ向買う言葉」でデコレーションする過程と重なって見えました。

そんなことを言い始めたら、あらゆるものづくりとの類似性を指摘できそうにも思えてきました。

言葉を紡ぐ、ということは立派にものづくりのひとつだ、ということに気付かされました。