あのトモ

- 本に出てくるあの娘ぼくがトモダチになろうっていったらどんな顔するんだろう -

ハローサマー、グッドバイ - ひと夏のディストピア

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

真夏に爽やかな物語が読みたくなりました。ジュブナイルな冒険譚か、はたまた甘酸っぱい一夏の恋か。そこでまずたどり着いたのがこの本でした。

地球のように太陽と、月と、大陸と、海のある惑星。大国同士では戦争の世の中で、政府の役人の息子、ドローヴは家族と夏を過ごしに港町へ訪れます。

毎年休暇に訪れている町で、少年はずっと気になっていた少女、ブラウンアイズと再会を果たします。

…と、それだけだとラブロマンス小説に止まってしまいますが、日常を侵食する戦争の影が、ファンタジー的な異国の設定を持って語られ、最後には残酷などんでん返しが待ち受けている作品なのです。

異質な世界観ではありますがしかし、物語の主軸は、少年のひと夏の闘いと成長といえるでしょう。

少年は家族とは分かり合えないという気持ちをずっと抱いてきました。

また、彼の両親のように、強い階級意識を持って人と接する同世代の人間にも嫌悪感を抱きつつも、どちらにも自分の意思を強くぶつけることが出来ないでいました。

しかし港町の人々や、ブラウンアイズと関わるうちに段々と、彼個人の自由な意見が出来るようになってゆきます。

…そして全てを覆す、抗いようもないどんでん返しで締めくくられます。え、まじで??となりました。

正直、主人公含め、政府の役人サイドの人間、ブラウンアイズ、港町の人々…登場する人という人に全く感情移入出来なかったので、読み辛かったです。

ただし登場する架空の生き物、ロリンは別。 毛むくじゃらの茶色い生き物で、普段は人里から少し離れた、山の麓の穴倉にひっそりと暮らしています。

彼らは、誰かを励ます特殊能力を持っています。普段は、どこからともなく毛長牛の家畜番としてそっと寄り添い、牛が坂道を登る時に近くを一緒に歩いて、無言で励ましの何かを送って、楽に坂を登れるようにしてやります。

それに人に対しても。人が悲しみに打ちひしがれている時や、森の中でひとりぼっちになってしまった時など、どこからともなくあらわれて、人を温めてやったり、同じく励ましてやったりします。ロリンまじ良いやつだなあ。

ひと夏の恋愛小説ともうたっていますが、それにしてはあまりに可愛らしさも爽やかさもないし…最後の破壊的展開は面白かったのだけど。