あのトモ

- 本に出てくるあの娘ぼくがトモダチになろうっていったらどんな顔するんだろう -

ヨコハマ買い出し紀行 - 穏やかな終末を横須賀から描く

 

ヨコハマ買い出し紀行 1 新装版 (アフタヌーンKC)

ヨコハマ買い出し紀行 1 新装版 (アフタヌーンKC)

 

 

 ケン・リュウの短編集「紙の動物園」のあとがきに、同短編集の中の「もののあわれ」という話は、日本の漫画「ヨコハマ買い出し紀行」に影響を受けた、とありました。

 

曰く、西洋の主人公は、みずから行動を起こして問題に立ち向かうのに対し、そうではないものを「ヨコハマ買い出し紀行」からは読み取ったと。

 

全然知らない漫画だったので読んでみました。買い出し紀行って言ってるし、絵柄もほのぼの系だし、日常系の作品?  どこでケン・リュウとつながるのか?  くらいに思いながら読み始めたら、なにこれSFじゃんしかも面白い、ってなりました。

 

こんなお話

 

(直接的な説明はなされていないのですが何らかの原因で) 地球規模での海面の上昇の影響で、地表が徐々に小さくなってゆき、ゆるやかに終わりが訪れようとしている状況の中、日本の「神奈川国」、かつては横須賀と呼ばれていたあたりに住む人々の日常を描いています。

 

丘を登りきったところには、ぽつんと小さな喫茶店があります。お客さんは1日にひとりくればいい方といった寂れ具合ですが、美人の店主、アルファは元気に切り盛りをしています。アルファはロボットです。喫茶店はもともと、アルファの持ち主のものでしたが、ある日アルファに店を任せ、何処かへふらっと出ていってしまいました。

 

登場人物たち

 

貴重なお客さんは常連さんがほとんど。近所のガソリンスタンドのおじさん、おじさんの町内会の他のおじさん達、ガソリンスタンドのおじさんと暮らす少年、少年の連れてきた友達、それにアルファの持ち主からの使いでやってきた別のロボットやら。

 

舞台設定

 

喫茶店の外に目を向けると、世界の様相は、すこし現代と違っていそうです。若者が徐々に少なくなっているところは同じですが、東京は「むさしのの国」、神奈川は「神奈川国」と地政がすこし異なるようです。

 

それに、説明がつかない存在が自然に溶け込んでいます。子どもの頃だけに水辺で会える、牙を持つ裸の美人「ミサゴ」、海岸で海の方角を見つめ動かぬ人面キノコ達、地上に降りることを許されず、決められたルートを周回し飛び続ける飛行艇。それにアルファ達ロボットが作られた背景と、男性ロボットが殆どいない設定について。作中でもとうとう説明されることのない彼らの正体は、読者の解釈に委ねられています。

 

アルファはロボットなので、人間よりはずっと長持ちしますし、見た目はずっと若いままです。彼女の語りには、まわりは成長してゆくし死んでゆくけれど、残り続ける身である切なさが練りこまれています。

 

「ヨコハマ買い出し」要素は ?

 

なぜ、「ヨコハマ買い出し」かというと、この世界殆ど物資がなくて、コーヒー豆一つ買いに行くにもヨコハマしか無いんです。アルファがわざわざ横須賀の方から原付で、ヨコハマまで買いに出る行為だけ抜き出して、そんなタイトルなのだと思います。

 

その道のりで描かれる世界は、世紀末的な酷い退廃はしておらず、ただ「枯れている」感じで不思議な印象を残します。

 

こんな穏やかな「終末モノ」、初めてでした。

 

あらすじ長くなったので一旦ここまで…

また考えたこと次へ続きます。