あのトモ

- 本に出てくるあの娘ぼくがトモダチになろうっていったらどんな顔するんだろう -

2084 - 1984 再解釈

2084 世界の終わり

2084 世界の終わり

フランスで最も権威のある文学賞の一つ、アカデミーフランセーズを受賞した、アルジェリア在住の作家による作品です。

あらすじ

「大聖戦」後の荒廃した近未来では、唯一神ヨラーとその代理人アビを頂点とするアビ教が、絶大な力を放つようになっていました。

結核を患ったアティは、山中に隔離されたサナトリウムで、死の淵に瀕した仲間たちを眺めて疑問を抱きます。

(神が間違いを犯すことがないのなら)いったいなにが、神の本質が沁み渡った人間を、発達前の分別を欠いた虫けらに退化させたのだろう?

と。彼は「言葉」に隠された力を疑います。

また巷では、違う世界の存在を示唆する「境界」の噂がありました。

アティはひどくそれに惹かれるようになります。

しばらくして奇跡的に回復したアティは、二年ぶりに首都コッツァバッドへ帰還を果たします。

首都の中心には最高権力者たちの管理する大ピラミッドが据えられ、その頂上4面には象徴的な巨大な目が描かれています。

帰還したアビは「言葉」と「宗教」に同様の疑問を持つ仲間と出会い、首都の中枢を目指します。果たしてアティは、人から生きる力を奪う「言語」と「宗教」の真実を見つけるのでしょうか。「境界」に辿り着けるのでしょうか。

というあらすじです。

本書が書かれなければならなかったわけについて

 所々でジョージ・オーウェルの「1984」が意識された内容ですので、合わせて読めば二倍味わい深くなるはずです。訳者あとがきに記された著者の執筆動機が印象に残りました。

現実はもう、オーウェルの「1984」の説明では補いきれなくなっていました。わたしたりが観ている全体主義的な幻想世界には、アラー、預言者、そして絶対に過ちなど犯さない聖人や代理人たちといった新しい登場人物が、いつのまに入り込んでいたのです。... わたしはすぐに感じました。わたしたちには新しい現実を解読するための新しい「1984」が必要だと。

思考停止はこわい

著者はアルジェリアの文脈を持って発言していますが、宗教・体制への服従を、思考停止を促す言語によって強要させらされる危惧は、かつての日本で、士気を上げるための、意味の薄い思考停止な言語が使われていた事実を思わせ、どきっとさせられました。