あのトモ

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LIFE SHIFT - 100年時代の(なんともマッチョな)人生戦略

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

あけましておめでとうございます。

年明け一発めはAmazonのベストセラー一位とされていたこちらの本を、IT業界に従事するアラサー女子視点で読んでみました。それも祖母、両親と共に過ごす帰省のタイミングで読むことで、一層沁みてくる読書体験となりました。

終章を入れて10章仕立ての、2016年末に出版された本です。少し前に出ていた本ですが、内容的にはまだまだ通用すると思います。

概要

本書では世代の異なる三名の架空の人物、ジャック(1945年生まれ)、ジミー(1971年生まれ)、ジェーン(1998年生まれ)を用意し、それぞれの「コーホート平均寿命」(テクノロジやその他社会的環境衛生的な進歩を加味した手法に基づいた寿命)を叩き出しました。

曰く、ジミー以降の世代では、100年生きる人生が主流になってくるといいます。そして、ジャックの世代までまかり通っていた、3ステージ型の生き方ー教育、就業、引退型の生き方ーでは、100年生きることが前提となる人生を、豊かに生きることが難しくなることを指摘します。

そこでどうすればよいか、というのが本著の論点です。

私は1989年生まれで、ジェーンとジミーの間の世代ですから、ジェーン寄りですが、ややジミーも意識した視点で読んでみました。アラサーの皆さんはこれと同じ読み方になると思います。

そうです、私たちにはどうやらあと70年も残されているのです.... これ読んで改めて自分は人生設計をロクに考えていなかったのを知りました。

なぜ従来型の人生ではまかり通らなくなるか

寿命が延びた分だけの、有形・無形の資産が必要だからです。

有形の資産の筆頭はお金です。従来型の65歳引退モデルでは、長すぎる引退期間を支えることは難しくなります。

無形資産については3つにわけて定義されていました。「生産性資産」「活力資産」「変身資産」です。これらには「慎重なメンテナンスと投資をする必要がある」といいます。また、繰り返し言われるのが「なにを知っているかではなく、誰を知っているかが大切」ということで、実際に行動して、得た人の繋がりを重視している印象でした。

生産性資産

生産性資産は 、仕事の生産性を高め 、所得とキャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産

仕事をして金を稼ぐための知識、問題解決をする頭の使い方のスキルと理解しました。本の中では単に頭で理解することだけでなく、「自分と同様のスキルと知識を持つ人」たちと「直接対面して会話する時間」を 割かなくてはならない とまで言い切っちゃってます。...

また、そういったコミュニティの中での「高い評判」は「生産性資産」なんだそうです。

活力資産

肉体的 ・精神的健康と心理的幸福感

「自己再生のコミュニティ」と筆者が呼んでいる、様々な階層で絡み合った、共通の複数の話題を持つ仲の良い友好関係がその資産に当たるそうです。あとは家族や、恋人など「愛」を覚える関係もこの資産に当たります。

変身資産

人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のこと

「自分についてある程度理解していること」によって得ることのできる、自分の人生に「一貫性」を与えることのできるものがこれに当たるそうです。人的ネットワークだったり、過去の決断とか、そういうものだと理解しました。

有形・無形資産を100年、うまくやりくりしてく人生

これまでみてきた有形・無形の資産をうまくやりくりする豊かな100年人生は、3ステージ(従来) に、1つか2つつけて、4か5ステージとすることで実現できそうなんだそうです。

筆者が提言している追加のステージは、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーの3つです。これらは共通して、特定の年齢層に結びつかず、人生でいつそのステージに踏み込んでもOKなんだそうです。

それぞれ次のようなものです。

エクスプローラ

いわゆる自分探しの期間と理解しました。本の中でも世界中を旅することが例としてあげられていました。

「他人の立場に立ってものを考える時間」、ひとの「るつぼ」の中に身を置く時間を設けることで、「長く生きる時代」に重要となる「自分と相性のいいものを見いだす資質」を磨くためのステージなんだそうです。

インディペンデント・プロデューサー

旧来のキャリアの道筋からはずれて自分のビジネスを始めた人

起業する人、というふうに理解しました。

ポートフォリオ・ワーカー

具体的な説明がなかったのですが、自分のやりたい/できる多種多様な仕事をパートタイムに分けて、色々やる人、というふうに理解しました。

これらの3ステージを人生の適当なところに組み入れていくことで人生に活力が生まれ、有形・無形の資産の落ち込みの場面に対応することができる、というのが主張でした。もちろんこれらのステージに移行するには、移行期間があります。

人生の落ち込みを再活性させるための、移行期間

うまく移行するためには、空いた時間、余暇の使い方を「レクリエーション」ではなく、「自己の再創造(リ・クリエーション)」に日頃から当てておく必要があるといいます。

常日頃から、新しい人的ネットワーク構築のためのアンテナを伸ばすことと、一歩引いたところから内省する癖を身につけておくこと、と言われたようにとらえました。

所感

これからの100年がどう変化していくか、そこでどう生きることができるのか、家庭は、社会は、政府はいまはどうで今後どうなるのか、ということを、具体的な数字をいくつも例に挙げて説得力を持って提言してきている本でした。しかしその提言はあまりにもマッチョな生き方なので、これを実践するのは正直しんどいな、というのが感想です。

常に内省と勉強をし、アンテナをはり、コミュニティへの参加を怠らず、前向きに!って。

普通に生きていれば勉強したくない時もあるし、人と会いたくない時もあるし、なんにしても動機が見つからない時だってあるものです… しかしそういう生き方がある、というのを示してくれたのは参考になりました。全ては無理でも、少なくともその方向に努力をすることは可能です。

親世代に提言できるか

終章で次のとおりありますが、社会学者のマーガレット・アーチャーにむしろ、私は深く同意しました。

社会学者のマ ーガレット ・ア ーチャ ーに言わせれば 、そこまでの自律性と内省の能力をもっている人はごく一部にすぎない 。大半の人は人生を受け身で経験することになる 、というのだ 。人生を自分で形づくれる人はほとんどいないと 、ア ーチャ ーは述べている ★ 2 。著者たちの考え方は違う 。

私の親世代も100年とは行かずとも90年とかそれくらいまで行き得る世代ですが、完全に3ステージ型の人生に沿ってきたように見えます。彼らにいまから、4ステージ、5ステージ型の人生にチャレンジしてみようよ、と言える人は多くないんじゃないでしょうか。親世代に今からやれ勉強しよう、やれ起業しよう、といってもそんな熱意も、そのための貯蓄も十分でない人がほとんどなのではないでしょうか。

後ろ向き選択肢の可能性は

長生きは良いことというのが前提に置かれた話でしたが、そうではないと捉える人も少なくない、というのが実際だと思います。後ろ向きな話ではありますが、もし、政府として自殺を合法化したら、寿命を迎える前に、自分の人生の幸せを思ってその選択をする人は少なくはないように思います。カート・ヴォネガットの短編「2BR02B」の世界のようですが、個人の生き方の自由を徹底させるのであれば、選択肢としては用意すべきなのでは、とたまに思ってしまうのでした。ちょっと影響範囲読めないし、どの組織にとってもメリットが薄い気がするので実現可能性は薄そうですけどね。

悲観的が過ぎてすみません。しかし考える材料としてぜひ、他にそんな世界を検討した作品があれば読んでみたいです。

前書いたやつ↓

2BR02B - ごきげんな世界、最後の問い - あのトモ